1979年に発表されてから、様々なバージョンで上演されている本作品。今回は、独自の世界観を持つ作家・演出家・脚本家による新解釈ということで、どんな舞台になるかとドキドキしながら観ました。

これが…とても良い、新しい『レミング』でした。

「維新派」の演出家である松本雄吉さんが描く世界は、登場人物の現実と夢と非現実の境があいまいで、更に光と闇を巧みに使った美しい舞台美術と演出により、一層その複雑さが引き立てられます。

そこに、松本雄吉さんの手による「ヂャンヂャン☆オペラ」を取り入れて、不思議な空間を作り上げています。独特のリズムとイントネーションにより、日常使っている言葉も非日常的になります。

そんな独特の世界で、素晴らしく素敵な透明感を持った常盤貴子さんが、狂気を孕んだ美しさで、往年の大女優・影山影子を演じています。そこにテンポよくコミカルに八嶋智人さんと片桐 仁さんが絡み、松重豊さんが怪しい不思議な世界へと誘います。

みなさんの演技が素晴らしいだけでなく、松本雄吉さん独特の台詞回しや演出を見事に体現していて、その実力に驚かされます。映像で観ているにも関わらず、拍手をしてしまいました！

鑑賞後、本作品に関して真面目に深く考えながら副音声を聴き始めたら…その落差に爆笑しました。けれども、松本さんの演出の仕方や、出演者の苦労話なども知ることができて、こちらもオススメです！