劇作家、演出家、小説家、コラムニストなどジャンルを超えて活躍し、鶴屋南北戯曲賞や岸田國士戯曲賞等といった演劇賞を受賞、また三島賞や芥川賞など多くの文学賞にもノミネートを重ね、今最も“旬”な演劇人の一人として熱い視線を集めている本谷有希子さん。

そんな彼女が率いる「劇団、本谷有希子」が、昨年青山円形劇場で上演したのが、今回ご紹介する『甘え』です。

父と二人暮らしで、異常なまでの束縛や暴力をうける純（小池栄子）。自身の価値観の「つまらなさ」と葛藤しながらも、家を出ていくこともできずに閉ざされた生活を送る。変わりたいと願う純が出会う新たな価値観とは……。

青山円形劇場の特性を活かしたシンプルな舞台空間の中で、本谷さんが描く自意識に絡めとられた登場人物達が、抜け出したい・変わりたいと願う様は、これまでの本谷作品以上に、強い緊張感と葛藤が伝わってきます。

昨年１０周年を迎えた「劇団、本谷有希子」と、その活躍の場をますます広める本谷有希子さんの新たな可能性を、どうぞその目でご覧下さい！

朗らかな明るいイメージで幅広い層から支持される小池栄子さん。最近ではドラマや映画等への出演も多く、今注目の女優さんです。

その彼女が今回挑んだのは、本谷さんの描く自意識と闘う、痛々しい程の渇望を抱く女性像でした。

内向的で大人しい性格ながら、その思考やセリフ、そして表情からにじみ出てくるある種のエロシズムを感じさせる演技は、これまでの小池さんにはない、新境地と言っても良いのではないでしょうか。

一人の舞台役者としての彼女の魅力を、どうぞ堪能して下さい。