アイヌ語で「名誉」の意味を持つこの村では、毎年、神木に祈りを捧げ、一年の平和を願う祭りが開催されていた。
終戦後、五作が村へ帰ると、村祭りの会場で事故が起きていた。
それからというもの、この村で祭りが行われることはなくなり、やがて村の人たちは神木のことすら忘れていく。
そしてただひとり、五作だけが、山にこもり神木を守り続けていた。
時が経っても、不思議な話ばかりする五作を、大人たちはホラ吹きと疎ましく思うようになっていた。
だが、門田、光太、花男、秀一の4人の小学生だけは別だった。
彼らは五作の話に耳を傾け、空き地で太鼓職人の五作から太鼓の手ほどきを受ける。
しかし中学、高校と、成長するにつれ五作との距離は遠のき、そのかわり彼らはバンド活動に熱中していく。
そして高校卒業と同時にやってくる別れのとき。
彼らは、別々の人生を歩むことになる。
2007年、彼らは33歳になっていた。
五作が倒れたという知らせを受けて、久しぶりにふるさとで再会した4人。
すっかり寂れてしまった村に驚いた彼らは、恵織祭りを復活しようという話で盛り上がり、五作のホラ話のなかでも一番スケールの大きかった話を実現させようとする。
全ての心に、ふるさとを。
純粋な気持ちが溢れ、誰の心にも温かい、郷愁人情ファンタジー。