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第3回劇作家・中島かずきさん後編

ちょっと聞きたい
あんなこと・
こんなことは、
当コンシェルジュまで

ご質問はこちらから

前半では、主に過去についてお答えいただきました。後半は、現在の中島さんを中心に質問しました。前半の中島さんを思い出しつつ、ご覧ください。

(Q57):では、後半に突入します。よろしくお願いします。漫画やアニメが好きだし、現在も好きだということですが、アニメの脚本を書こうと思ったことはありますか?
書きたいなと思うことはある。
(Q58):学生の頃、編集者になりたいと思っていたということですが、アニメ関係の仕事につこうと思ったことはありますか?
僕は、オタクの走りで、『OUT』(※1)とか『アニメージュ』(※2)とかを創刊で買ってるような男だから、業界がいかに大変かと言う事を知っているわけですよ。
そこには…。
入りたくないなと。
(Q59):実際に書くときの環境ですが、パソコンを使用していますよね。何を使用していますか?
i-macとi-book。i-macは、新しいデザインのね。口笛を吹くとこっち向くやつ。(※3)
こっち向きません。
(笑)あ、i-macを犬型にしたのがAIBO(※4)だよ。
(Q60):だまされませんっ! パソコンを使用するようになったのはいつからですか?
30歳前くらいだと思う。『仮名絵本西遊記』(※5)の初演を初めてちゃんと書いた。その前に練習で手書きで書いた『ヒデマロ3』(※6)の台本を全部打ち込んだよ。それで練習をしたというのを覚えているから。
(Q61):ということは、手書き→ワープロ→PCという流れかと思っていたのですが、ワープロの使用は?
ワープロはすっ飛ばしてパソコンに行った。
(Q62):手書きだからこそできた事は?
手書きの頃は、表紙をまず作るんですよ。表紙をレイアウトするのが結構楽しかったりして。まず、ネーミングが先なんだけど。ネーミングをやるのに時間がかかって、それから手書きでやって。
(Q63):その手書き表紙というのは、イラストですか?
絵は作らないんだけどね、レイアウトをね。だから、例えば…(といって、おもむろに人のメモ用紙をとって描き出す(※7))こう綺麗に作って、悦に入ってたんですよ。
(Q64):自分でこうして表紙を作った後に、皆に渡す台本もコレが生かさて表紙になるんですか?
生かされる。だから、一生懸命作ってたんだよ。『ヒデマロ5』の時には台本だけのために、藤井昌浩(※8)君ていう漫画家に四コマ漫画を描いてもらって、それを中に挟みこんでたんだよ。
それは、表に出ることなく台本の中だけなんですよね。
そうそうそう。
勿体無い!
その頃は東京と大阪だった(※9)し、劇団☆新感線には途中参加だったんだよね。だから、新感線の連中に自分のホンを面白いと思ってもらわなきゃいけない、みたいな気持ちはあったね。だから、ト書きにも異常に凝ったし。そこで「やつらにハッタリかましちゃぁ!」みたいな感じで頑張ってたんだね。
(Q65):表紙は、PCに変わってから作らなくなってしまったんですか?
そうだね。最近は締め切りに追われて、とりあえず、もういいやさっさと書こうって(笑)。でね、手書きの方が走ることっていうか…ノリが違うんだよ。いのうえもそうなんだけど、いのうえも自分が面白い所を書くと字が笑うんだよね。
字が笑う?
だから「ハーハッハッハッ」って書くと、本当に字が笑うんだよ。楽しい♪って。
字面で分かるということ?
その当時は原稿書いてて、例えばこうやって(再び、人のメモ用紙をとって描き出す)…ヒデマロ登場って書くでしょ。その次にヒデマロの台詞が書かれてて、「ヒデマロ:そうはいかないっ!」とかやってたわけよ(笑)
漫画の擬音みたいなものですね。
そうそうそう。
それは、とっても分かりやすいって事ですけどね。それがPCだと無くなっちゃって…
「つまんねーのぉ」みたいな。だんだん大人の劇作家になってきちゃうと。
(Q66):脚本を書く時間帯は?
今は、夜中の0:00過ぎから朝の6:00くらい。
(Q67):いつ寝てるんですか?
そのあと。6:00くらいから寝て、昼の12:00ごろ起きて会社に行く。
出勤時間がそんなに早くないのですね。
そう。だから、持ってる様なもんです。
(Q68):睡眠時間は6時間くらい?
5〜6時間だね。毎日。
(Q69):でも、その時間は人間として眠くなってくることはないのですか?
もう、周期になってるから大丈夫!
(Q70):逆に、仕事がひと段落して書かなくていい時に、その時間帯に眠れなくて困るとか、そういう事は無いのですか?
基本的には起きちゃってる。ただ、今はひと段落する時が無いんでねー。年に4〜5本やってますから。もし、あったとしても…その時間帯はやっぱり起きてるな。
その方が、生活のペースが乱れなくていいのかもしれないですね。
そうなんだよね。
(Q71):どこで書いてるんですか?
自分の部屋で。
(Q72):資料の本等はどう保存してるんですか?
とりあえずは部屋に置いてますよ。
(Q73):終わって、もう必要ないだろうという本の保存方法は?
それは、処分してます。特に結婚した時とか子供ができた時にだいぶ処分して、後で泣く泣く古本屋に行って、自分で売った本をまた買ってきたりしてるよ(笑)。売ったのに買っちゃったよとか言いながら。
それって、悲しいですね(笑)
悲しいねー(笑)
(Q74):仕事する時に飲食は?
それは、もうコーヒー! コーヒーがぶ飲み。ちゃんと豆挽いて入れてるよ,一杯だてで。
(Q75):食べ物は?
まぁ、食べますね。夜食で適当なものを。甘党なので甘いものを。
(Q76):お酒は普段から飲まないそうですが。
だめだね。大体、生ビール一杯くらいで終わりですね。
もっぱら甘いものと。
チョコも好きだし、アンコも好きだし。
(Q77):どちらかではないんですか!?
和も洋も好きよ。
節操無いですねー。
だから、甘党なんだってば。
それが、真の甘党なんですね!
そうだよ、当たり前じゃないかっ! 何言ってるんだっ!
なんで、怒られなきゃいけないんですか!
チョコが駄目とかいうヤツは、甘党を語るに値しないね。それは外道だよっ!
(Q78):もう、それ以上言わなくていいですよ! ところで、気分転換はしますか?
気分転換というか…現実逃避はよくしますね(笑)。今、世の中にはネットという便利なものがありますからね。
 
※ 1. 『OUT』…月刊OUT。1977年創刊。アニメ雑誌の先駆者ともいえる。1995年、廃刊。
※ 2. 『アニメージュ』…1978年創刊。徳間書店。本格的なアニメ雑誌として人気を得る。現在もその人気は続いている。
※ 3. 口笛を吹くとこっち向くやつ…そんなi-macはありません。嘘です。
※ 4. AIBO…コミュニケーション犬型ロボット。SONYから発売。i-macとは関係ありません。
※ 5. 『仮名絵本西遊記』…1989年。新感線公演。東京公演:シアター・トップス。大阪公演:扇町ミュージアムスクエア。
※ 6. 『ヒデマロ3』…1988年。新感線公演。東京公演:シアター・トップス。大阪公演:扇町ミュージアムスクエア
※ 7. 人のメモ用紙をとって描き出す…『ヒデマロ3』の表紙用イラストを例えとして描いてくれたのですが、原本があるということですので、お借りしました(画像参照)。
※ 8. 藤井昌浩……初期新感線の宣伝イラストを担当。演劇ぶっく社より発売されている、現代戯曲シリーズ『ヨムゲキ100 宇宙防衛軍ヒデマロ』(一般書店にて発売中。\1,000)には、その漫画が掲載されている(画像参照)。
※ 9. 東京と大阪だった…中島さんは大学入学と共に上京。新感線は大阪で活動していた
(Q79):家のネット環境は?
ケーブルテレビです。
そうすると、どんどんアッチコッチのサイトをみちゃって…。
よし、もうそろそろ仕事するぞ!なんて言って、ファンのサイトや、2ちゃん(※10)に入って自分の悪口呼んで、ガクーンと落ち込んで、益々やる気をなくすとかね(笑)
それって、気分転換になってないのでは…。
あと、前にあったんだけど、「自分に喝を入れるぞ!」とかいって、自分の本を「駄目だっ!」って書いてるサイトがあるの知ってたから、そこに行って「敢えて読むんだぁ」と思って読んで…そうしたら凄く落ち込んで、益々駄目になったって事がありましたね。
全然意味が無いのでは(笑)。むしろマイナスですよ。
マイナスですよ(笑)
 
※ 10. 2ちゃん…2ちゃんねる。「ハッキング」から「夜のおかず」までを手広くカバーする巨大掲示板群。
※ 11.『OINARI』…作・中島かずき、演出・加納幸和。今夏上演。
(Q80):本とネットでは、資料探しとしてはどちらを利用してますか?
今は、ネットで凄く便利になったよね。本を探すにしても、とりあえずネットで検索してから本を探すっていうのができるし。夜中の三時に、不意に「これ、どうしよう…」って時に探せるじゃない。それは、楽になったよね。 ただ、本屋に入って…時々本が「私を読んで!」っていう光線を発してるのがあるんだよね。あれは、あれで捨てがたい。だから、全然考えてないところで、突然ポンッと出会えると面白かったりするよね。この間も『OINARI』(※11)を書いてる時に、本当に偶然、その本が出てる事すら知らなかったんだけど、青山ブックセンターで『日本の国策映画』っていう本が一冊あって、結果的にその本がネタ本になったからね。
(Q81):それは、探しに行って見つけたのではなくて?
資料探しには行ったんだけどね。戦前の浅草が舞台なんで、軽演劇の話とかがないかなって。で、まあたまたまその本を見つけて、映画の話でもいいかなと軽い気持ちで買ったらこれがもう大当たりで。ね。その時代の状況とか、国民に戦意発揚させるために作った国策映画だけど、そういうお説教くさいのは戦時下でもみんなあんまり見に行かなくて、エノケンとかの方が大入りになってるって。「やっぱりそうか」と思いましたね。
(Q82):書店では本そのものが必要な時の資料探しだと思うんですけど、ネットっていうのはピンポイントで、本はいらないんだけど、部分的な情報が手に入るという利点があると思うのですが…。
それはあるよね。ネット上では妄想も書かれているわけですから、それが本当か嘘かっていう事の見極めはしなければならないけど、それが分かればネットは凄く便利だと思う。で、そこからキーワード伝いで本が買えたりする訳でしょう。ただ、本屋には毎日行ってるけどね。
(Q83):夜中の仕事中にBGMはかけますか?
かけたりかけなかったり。
 
(Q84):かけるのは、どんな曲ですか?
俺、意外と岡崎 司(※12)のファンなんで、新感線の曲をよく聴いてるんですよ。
(Q85):新感線CDの中でもお気に入りというのは、ありますか?
好きな曲をPCでサクサクっと編集してそのままPCでかけながらやってます。
Q86):オレ新感線曲目リストがあるんですね!
でも、今はOSを変えた時点でチャラになったけど。
勿体無いですね。
いやいや、たいしたこと無い。あと、他にはね、水木一郎アニキ(※13)とかね。
(Q87):アニキはベスト版で?
そうそう。アニキの初期だよ。『原始少年リュウ』(※14)から『大鉄人17(ワンセブン)』(※15)まで。
(Q88):家以外で仕事をすることは?
ありますね。最近減ったけど、子供が小さいときはあんまり早く帰ると、子供起こしちゃうんで、喫茶店とかで書いて帰ったりとか。あと、週刊誌の漫画編集者やってる時って、原稿待ちの時間というのがあるんだよね。ただ、原稿上がったらダッシュで行かなきゃならないんだけどね。だけど、それまでは自分は「早く上がれ〜」と祈るだけの時間の時ね。
ただ、ひたすら待つだけの仕事ですね。
その時は、勿体無いから自分の原稿書いたりしてた。一番若いときは移動時間…バスの中とか電車の中とかでも書いてたりしてた。
器用ですよね。
ほんと、メモだよ。ピューッと書いて、それをまた清書する。
(Q89):後で読めなくなったりしないんですか?
大体分かるけどね。どっちにしても、そこで書いた事をもう一度書いて清書するときに変わっちゃうから。
(Q90):自宅から一番遠くで書いたのは?
ハワイですかね。
ハワイ!? どうしてハワイで?
聞いて下さいよっ! もう、本当に泣きそうだったんだから!!
はいっ。
1998年頃にですね、子供が小学校に上がるので、嫁さんの方のじーちゃん・ばーちゃんと、親子4人の計6人でハワイに家族旅行に小学校入学前に行こうと。そういうことでですね、ある作品を書かなければいけなかったんですけど、とりあえず三分の一くらい書いて、あとはちょっと一週間ほど、勘弁してつかぁさいというFAXを送ろうとしたところにですね、プロデューサーの方から電話が掛かってきまして、それが出掛ける二時間前ですわ。
で、ハワイ旅行は一週間くらいだったんだけど「その10日後に〆切です。譲れませんっ。」って言われちゃったんですわ。その瞬間に、カチッと自分の中でスイッチが入りまして、分かりましたって言って、もう、家族みんなにゴメンナサイって感じだったんだけど、そこから出掛けるまでワーッともう書き始めて、成田エキスプレスの中でもワーッと書いて、空港でもワーッと書いて、ハワイに着いてホテルで自主カンヅメですよ。家族は観光に行ってる間、オレはもうここで原稿書くから!って。
偉いなぁー(笑)
偉いだろうっ!
作家の鏡ですね。
本当ですよ、もうっ。
(Q91):それで、結果は!?
三分の一くらい書いて、結局三分の二くらい書き上がったことになったから、なんとか〆切には間に合ったって感じ。
(Q92):ハワイを満喫できたのですか?
ハワイの…マクドナルドは高いよ(笑)。ハワイは、ホテルとワイキキのビーチにあるマクドナルドと、他はちょっと行ったかな。
それぐらいしか行けなかったのですね…
本当だよっ! あと、アロハ買った。
買い物ができて良かったですね。
一日くらいな(笑)
(Q93):今、ちょっと子供さんの話が出たんですが、何人いらっしゃるんですか?
二人です。男の子が中学二年生で、女の子が小学校六年生。
(Q94):子供さん達を将来演劇の道に進ませようと考えたことはありますか?
それは別に考えてないです。ただ娘は、まぁそういうことに興味があるみたいだから、人間形成も含めて、やってみたいんだったらやってみたらいいんじゃないかと思ってるけどね。
 
※ 12. 岡崎 司…劇団☆新感線の音楽を担当。
※ 13. 水木一郎アニキ…水木一郎のこと。1968年『君にささげる僕の歌』でデビュー。数多くのアニメソングを歌う。1999年には24時間1000曲ライブを行う。
※ 15. 『大鉄人17(ワンセブン)』…1977年。東映。TBS系にて放映。ロボットもの特撮番組。
(Q95):作品を書き上げるまでの時間で、一番早く書き上げた作品は?
本当に、まったくゼロからひと月で書き上げたのは、『月晶島綺譚』(※16)ですね。プロットもゼロの段階からひと月で作った。
(Q96):逆に最も時間がかかったのは?
『みんなでお茶を・血風編』(※17)で、一年くらいかな。
『ももカン』時代の作品ですよね。
そうそう。その芝居で、オレは芝居で漫画をやるんだと決意したんだよ。自分の中である種演劇的な構造みたいのがあって、それをなんとかしなきゃいけないなと思って一生懸命やったんだけど、結果的に全部書き上げても「違うな」とか思った訳ですよ。
(Q97):それだけ自分の中で、ストーリーだけでなく、いろんな事を考えながら作っていった結果、一年かかったということですか?
そうだね。煮詰まりながらね。その結果やってみて違うって思ったしね。次に書いたのが『ディナー・ウォーズ』(※18)っていう、今の新感線の基礎になってる作品なんだよね。それは、もうその後三ヶ月くらいで、楽しくあっという間に書けたからね。
(Q98):早いときは一ヶ月くらいで書けてしまうのですか?
今は大体二ヶ月くらいかな。
(Q99):プロットも含めてですか?
いや、含めると三ヶ月くらいかな。
単純な時間計算をすると、ひと作品三ヶ月くらいとして…一年は12ヶ月ですよね。そうすると、一年四本くらいということになりますが。
だから、今は大体そのくらいですよ。
でも、四本だとカツカツですよね。
ただ、今は再演があったりするから。
既に作品が出来上がってる分、早くできますものね。
そう。
 
※ 16. 『月晶島綺譚』…1999年。中島かずき・作。小池竹美・演出。RUP主催。  
※ 17. 『みんなでお茶を・血風編』…1979年。中島かずき・作・演出。
※ 18. 『ディナー・ウォーズ』…1982年。劇団ファントム・オブ・パラダイス公演。中島かずき・作、いのうえひでのり・演出。「ももカン」時代の作品を再構成した物。
(Q100):先程『月晶島綺譚』の話が出ましたが、主演が稲垣吾郎さんでしたよね。SMAPつながりの質問なのですが、以前木村拓哉さん主演のテレビドラマを書きましたよね。『君は時のかなたへ』(※19)これがテレビドラマ脚本の初作品ですか?
最初で最後ですね。今のところ。
(Q101):またテレビドラマを書きたいと思いますか?
やりたい物もありますよ。だけど、トレンディドラマは自分ではかけないと思っているからね。
そうですね、想像がつきませんね。
 
※ 19. 『君は時のかなたへ』…1995年。テレビ朝日系にて放映。
隆 慶一郎さんの『影武者徳川家康』(※20)を大河ドラマでやるんだったら、俺は絶対にシナリオを書きたいと思ってますよ。
(Q102):映画の脚本に関しては?
映画も機会があればね、やりたいですね。
(Q103):中島さんの作品は、現代が舞台の物ってほぼ無いですよね。一番好きな時代設定ってありますか?
それは、テーマや興味のある題材が何かによるよ。この時代だから好きっていうのは特に無い。まぁ、もちろん戦国時代とかは面白いと思うけどね。
(Q104):過去というのは、中島さんの中では?
そうですね。今よりは過去の方が好きですね。
 
※ 20. 隆 慶一郎さんの『影武者徳川家康』…長編歴史小説。全3巻で新潮文庫より発売中。原哲夫・画により、少年ジャンプで漫画化された。
(Q105):好きな過去にタイムスリップできるとしたら…など考えますか?
15〜16歳の頃に親の目を盗みながら『キカイダー01』(※21)を「コレはどうだろう…?」とか思いながら見てる自分がいる訳だよな。「そろそろこういうの卒業しなきゃいけないんじゃないか」と。そういう自分の前に現れて、「そのまま生きろっ! お前はそれで飯が食えるんだから、そのまま生きろっ!」って言って「迷うなっ!テレビ見ろっ!漫画読めっ!勉強するよりその方が飯食えるんだからっ!」と。あと、「本を捨てるなっ!漫画をとっておけっ!それが飯の種だっ!」っていうね。俺は。
 
※ 21. 『キカイダー01』…1973〜74年。東映。NET系(現・TV朝日)にて放映。『人造人間キカイダー』の続編。前半で話題に上った志穂美悦子が「ビジンダー」を演じている。
(Q106):当時の自分は、そうやって突然未来の自分がやってきて、それを信じると思いますか?
だって、おんなじ顔してるもん。
…。
変わってないから、あんまり。
いや、そういうことではなくて、当時の自分はそういう不思議な現象が起きた時に受け入れるようなタイプだったのか、否定するような現実主義者だったのかという事なのですが。
そういう意味では、否定すると思うけどね。そういった意味で言えば現実主義者ですよね。でも、自分にそっくりなヤツが来て「そのまま生きろっ!」って言われたら「オッケー!」って言うね。
目の前にいるヤツがそっくりだという現実は受け入れると。
目の前に明らかに俺が歳をとったヤツがいてさ、そいつが「そのまま生きろっ!」って言ったら迷わずにそうするよ(笑)。
(Q107):そんな中島さんの理想の作家像は?
それは、もう「日本一のオタク劇作家」ですよ。
   
(Q108):「日本一のオタク劇作家」というのは、具体的にどの様な作家なのですか?
オタクで劇作家なヤツだよ。日本一のオタクになるのも大変だし、いわんや日本一の劇作家なんて到底無理だけど、この二つの交わりに位置するのって、僕ときだつよし(※22)くんくらいなんで、とりあえず戦えるかな?って(笑)
(Q109):戦ったら勝てそうですか?
うーんとね、彼は特撮界ではライターなんですね。僕は編集者なんですよ。僕は発注できる方なんで、僕の方が強いんですよ!(笑)
 
※ 22. きだつよし…劇団「TEAM発砲B・zin」主宰。作・演出を担当。1969生まれ。特撮物のTV脚本としては『仮面ライダークウガ』『星獣戦隊ギンガマン』がある。
何の勝負してるのですか!オタク度とかね、作家としてってところで勝負しましょうよー。
それが、大人の戦いってもんだね(笑)。でも、きだ君は「仮面ライダー」のシナリオと「戦隊物」(※23)のシナリオを書いてるから、そういう意味で言うとオタク劇作家としては遥かに先に行ってますね。ちきしょう! 負けてます。
負けないで下さい。
ようし、「戦隊物」のシナリオ書くぞぉー。ヤツが単発でやってるなら、俺はシリーズ構成だ!とか、そういうことだな。
そんな微妙なラインで戦わないで下さいよ。
ちょっと、オタク論になるんですけど。
 
※ 23. 「戦隊物」…東映『秘密戦隊ゴレンジャー』から始まった特撮ヒーロー者。ヒーローが複数人集まり、力を合わせて悪を倒す。
どうぞ。
第一世代のオタクっていうのは、オタクの道が無かったから、切り開いていた訳ですよ。つまり今みたいに情報が多くないから、ある程度系統立てて勉強して、ある遡りとか位置づけが個人で何とかなったんだよね。でも現在、月に108本アニメ作品が作られている時代は…この事は、前に庵野秀明(※24)さんから聞いたんだけど、ひと月に人間の煩悩の数だけアニメが生まれている訳ですわ。そうなると、今の事を追いかけるだけで精一杯で、なかなか遡れないという辛さはあると思うけどね。だから、古い世代のオタク達は今のオタクは勉強不足だと。要するに、自分の身の回りにある、目の前にある現象だけで、物事を語ろうとするというのは凄く感じるね。ちょっと調べれば、その前にある事つまり引用なんだけど、その引用が実は孫引きだと。本来の元にたどり着く前の段階で、語ってしまっていることが多い気がするね。
 
※ 24. 庵野秀明…監督・脚本家。TVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」('95)を監督。その後、「ラブ&ポップ」('98)で実写 商業映画を初監督。以降、アニメ・映画界で活躍。
(Q110):でも、現在のネット環境のお陰で、得るべき情報量と比例して、得られる情報量も増えている事にはならないのでしょうか?
えーと、例えば「●●はできますか?」という質問に対して「●●はできません。」又は「●●はできます。」という答えはできるんだよね。でも、その先が無い。つまり、イエス・ノーの答えでしかない。それが、今の子達の共通する弱さのような気がするという話をしているよ。それは、情報が多すぎるから取捨選択…ある質問に関して答えを返すということでしかずっとやってきてない。そういう人達が多いんじゃないかと。
(Q111):でもオタクのイメージって、自分で調べてなんぼだと思うのですが…。
そう思うだろう!でも、それが昔のオタクだったんだよ。今のオタクは「もっとくれ、もっとくれ。」なんだよ。ネットがあるんだったら検索しろよと思うんだけど、いきなりやってきて「教えてください」という人が多いと思う。それは、お芝居を観る人がそうかもしれない。客席に座って「もっと頂戴もっと頂戴」。もっともらえなかったら「もう駄目ね」となる。もちろんそうじゃないお客さんの方が大半だと思うけど、ちょっと気になる傾向だね。
(Q112):中島さんもそうだったのですか?
そりゃあ、そういう時代に育ったからね。ジャンルも現在みたく細分化されていなかったから、一生懸命SFっぽい物を探してた。「この作品のこの部分がSFっぽいからいいよね」とかね。今みたいに、アメコミ(※25)の主人公がハリウッドで次々に映画化される時代じゃないから。
 
※ 25. アメコミ…アメリカンコミックスの略。スーパーマンやバットマン、スパーダーマン、デアデビル、X-MEN、超人ハルクなど。脚注では書ききれないほどの作品数がある。
映画といえば、『阿修羅城の瞳』予告編が映画館で流れましたが、ご覧になりました?
見た!『シカゴ』(※26)観に行った時に見ましたよ。
(Q114):いかがでした?
まず、「わぁーっ」って思うよね。驚きというか。あとは、お客さんも見てるから「今、見ているお客さん達はどう思うんだろうな、これって」と思ったね。
<
(Q115):では、『阿修羅城の瞳』の見所をお願いします。
スケールアップしてますよ! キャストを一新して、パワフルな芝居になってるんじゃないですか。本読みの時に、凄く夏木さんも天海さんも作りこんできていて、テンションの高い本読みだったんですよ。のっけから「うわあ」って思いましたね。今回で、演舞場も三度目なので、そういう意味では、一段とパワフルなものになっているんじゃないんですか?一回目は、ある種の挑戦だったしね。「やってるやるぜ!」っていう思いがすごくあったけど、それをもう一回『アテルイ』でやって、今回の『阿修羅城の瞳』で一からまた新しいものをっていうね。いのうえはクールでスタイリッシュって言ってたのかな。つばきと出門と邪空の三人の人生がぶつかり合うようなものになればいいなと思いますけどね。
 
※ 26. 『シカゴ』…第75回アカデミー賞最優秀作品賞受賞。1920年代のシカゴを舞台に繰り広げられる物語。
(Q116):2000年に新橋演舞場で、初めて客席から『阿修羅城の瞳』を観て、最初に思ったことは?
「瓢箪から駒」だよ。初演の『阿修羅城の瞳』(※27)の時に「次に再演する時は、演舞場だね」って、本当に冗談で言ってたからね。
凄いですよね。
うわぁ、幸せだと思ったよ。
(Q117):演舞場ならではの、いいところは?
おでん屋(※28)のおじさんがイカシテルんだよ。
(Q118):おでんとおじさんと、どちらがいいのですか?
おでんもおじさんも! おでんとおじさんは一緒くた。
(Q119):劇場としての演舞場の見所は?
包み込むような感じかな。客席に舞台が近いんだよね。だから、芝居を観るのにいい小屋だと思いますよ。あったい小屋。芝居小屋独特の匂いがして、僕は好きですね。
(Q120):他には何か?
カキ氷と、小倉アイスの甘味も美味いよ。あと、戯曲(※29)売り場で戯曲を買ってください。DVDも。
(Q121):ありがとうございます(笑)。9月に上演する松竹座の見所は?
いい小屋だよ。観やすいという意味では、演舞場より観やすいかもしれないね。一階が小さくて、三階まであるんだよ。キャパ(※30)も松竹より少ないし。それから、外に出るとすぐ道頓堀(※31)だしね。
すぐに飲みに行けますね。
ナンパし放題だしね。ひっかけ橋(※32)でひっかけてから芝居観に来いって感じだな。
そんなぁ。
それだっ! 新しいナンパのポイントだよ。「『阿修羅城の瞳』観に行かない?」ってひっかけて来るって(笑)
 
※ 27. 初演の『阿修羅城の瞳』…1987年。劇団☆新感線公演。
※ 28. おでん屋…新橋演舞場3Fにあるおでん屋の事。本当に美味しい。
※ 29. 戯曲…演劇台本。一般的には、台本を書籍にして販売しているものを指す。
※ 30. キャパ…劇場収容人数。劇場入り口付近に、必ず表示されている。公演により、舞台セットや進行上の事情から客席を減らす事もある。
※ 31. 道頓堀…大阪の名所。多くの飲食店街が集まっている。同所の道頓堀川は1985年阪神優勝の際にファンが飛び込んだことでも有名。
※ 32. ひっかけ橋…道頓堀川のかかる橋。ナンパの名所。
(Q122):9月には東京で、10月には名古屋で『OINARI』が上演されますが、見所をお願いします。
活劇ではないんですよ。人情喜劇って言えばいいのかな。中島流の活劇ではないエンターテイメントという意味で、苦労もしたけど、新しい感じになったかなと思います。異化効果(※33)っていうか…芝居全体でいうと、色々な人が出ている、ごった煮の化学反応っていうのかな。そういうのを楽しんでください。
まとめると、9月→大阪にて『阿修羅城の瞳』、東京にて『OINARI』。10月→名古屋にて『OINARI』。
そうですね。
(Q123):地方公演の度に、その地方に行くのですか?
行ける時には行きます。新感線はできるだけ大楽は行きたいと思っていますが。制作の人達に「何しに来るんですか?」と冷たく言われるんですがね。
(Q124):今、『七芒星』のDVD購入を迷っている方々もこの「お仕事拝見!!」を読んでいると思うのですが、迷えるお客様に何か一言お願いします。
迷いなさい。おおいに。道に迷った分だけ足腰が強くなる。
 
※ 33. 異化効果…. ある事物からその特性であると一般に認知されている部分をとり除くと、その事物が未知の異様なものに見えるという効果。
月影先生(※34)ですか!?
迷いなさいっ!
(Q125):月影先生といえば、『花の紅天狗』(※35)のDVD化が決定しましたので、一言お願いします。
ごめんなさい。すいません。悪気は無かったのです。見逃してください。
謝られても…。
だって、なんでDVD化するのよっ! 俺、知らないよ〜。ホントに。俺のせいじゃないからね〜。
書いた本人が、なんてこと言うんですか!
芝居だからと思って書いたんだからねー。やばいよ。あーあ。
どうしよう(泣)。また、発売前に宣伝してください。お願いします。
…。
どうして何も言ってくれないのですか?
もう逃げよう。
 
※ 34. 月影先生…『花の紅天狗』登場人物を指す。決して『ガラスの仮面』の登場人物ではない。中島さんのコメントは、劇中の月影先生のセリフ。
※ 35. 『花の紅天狗』…初演:1996年。再演:2003年4月〜5月。この度DVD化が決定したのは、再演版になります。
(Q126):逃げないで下さい。まだ質問があります。20歳の中島さんに、メッセージを伝えるとしたら?
「夏のコマ劇場『百恵ちゃん祭り』(※36)に行っておかなきゃ駄目だよ、お前!」って言うね。
(Q127):どうして『百恵ちゃん祭り』なのですか?
百恵ちゃんは、『不死鳥伝説』(※37)をやったんですよ。百恵ちゃんがエスパーで、悪の岡田真澄と超能力で戦う話だったんだよ。コマ劇場で百恵ちゃんがそんなことやってるんだよ。「お前は何故それを見ておかなかった!?」というのがあって。
(Q128):観ていないのですか?
そうなんだよ。俺は百恵ちゃんのファンだったけど、山口百恵という象徴に対するファンなので生は見ないと決めていたのね。だから、ラストコンサートも行ってないんだよ。それは別に行かなくてもいい。ただし、今にして思うと「しまった!百恵ちゃんがエスパーの話をどのくらいのチープさでやっているのかを確認しておくべきだった」と(笑)。
(Q129):きっとこのインタビューを読んでいる皆さんが「どんなイベントだったんだろう?」と気になっていることと思いますが、最後のメッセージが『百恵ちゃん祭り』というのも寂しいので、ここまで読んでくださった皆さんに、何か一言お願いします。
僕の質問を一つ一つ読むごとにろうそくを吹き消していって下さい。百本(※38)全部消えたら、お化けがでるよ!
出ません! お忙しい中、ご協力ありがとうございました。
 
※ 36. 『百恵ちゃん祭り』…1975年に第一回を開催。ミュージカルとショーの二部構成になっていた。
※ 37. 『不死鳥伝説』…1980年発売。山口百恵のアルバム。1993年にはCD化されている。インタビュー中のストーリは『百恵ちゃん祭り』ミュージカル部分の事。
※ 38. 百本…結局、100問を超えてしまいました。

<special thanks to 藤井昌浩様、(有)演劇ぶっく社>
インタビュアー:イーオシバイ 木南麻樹

中島かずき(なかしまかずき) <作家>
1959年8月19日生まれ。
舞台の脚本を中心に活動。座長、いのうえひでのりとは高校演劇を通して知り合う。
85年4月『炎のハイパーステップ』より座付作家として「劇団☆新感線」に参加。以来、『スサノオ』『髑髏城の七人』『阿修羅城の瞳』など、“いのうえ歌舞伎” と呼ばれる歴史や神話をモチーフにし、物語性を重視した脚本を多く生み出した。複雑に絡み合う複線を多用した物語は、疾走感とグルーヴ感あふれる演出とあいまって、新感線の代表作となっている。また、『月晶島綺譚』(主演:稲垣吾郎)、ながさき阿蘭陀年オリジナル音楽劇『出島』(99/木の実ナナ主演)、音楽活劇『レディ・ゾロ』(03年/匠ひびき主演)、『OINARI〜浅草ギンコ物語』(03年/宮本信子主演)等の外部への書き下ろし作品でも活躍している。02年には『アテルイ』で第2回朝日舞台芸術賞・秋元松代賞の作品賞と第47回岸田國士戯曲賞を受賞。
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